エンジニアらしき人のひとりごと

100人中100人は興味を示さなくても、100万人居たら1人くらいは面白いと思ってくれそうな、重箱の隅をほじくってみるブログ。

テレビ24年間の進化② 1995年頃のテレビの機能

新4K8K衛星放送(新4K8K放送、新4K放送、8K放送とも)が、いよいよ2018年12月に始まります。
それを記念して、私の手元にあるカタログの情報をベースに、24年間のテレビの進化についてまとめようとしています。

本シリーズの記事一覧は、こちらから。
tokieng.hatenablog.com

で、その2回目です。

テレビといえば放送波の映像を映し出すのが目的の装置ですが、それ以外にも様々な機能がありますよね。
現代(2018年)のテレビの機能といえば、YouTubeなどインターネットで配信されている動画を再生したり、音声で操作できたり、USB-HDDを繋ぐと録画できたり、などなど。

今回は、1994~1995年前半のテレビの機能を振り返ってみることにします。

このころは、パソコンで言えばWindows95が出た時期です。「マルチメディア」という言葉が流行りだしたころ、でしょうか。
テレビにも、「マルチメディア」の風の香りが、届き始めていました。

文字放送

「文字放送」とは、簡単に言えば、今で言う地デジ・BSデジタル放送におけるデータ放送(リモコンの「dボタン」を押したときに表示されるアレ)と同じようなものです。
当時の地上アナログテレビ放送でも、テレビの映像・音声用信号と一緒に、文字データを放送していました。「文字多重放送」や、もう少し時代が進むと「モジネット」という愛称でも呼ばれていました。

文字放送では、ニュース、天気予報、交通情報、株価、競馬情報などがいつでも得られます。同じ仕組みを使って、テレビ番組によっては字幕放送も行っていました。

当時を振り返ると、インターネットなんて、研究機関か極一部の企業でしか使われていなかった時代。スマホi-modeも無かった時代なのです。パソコン通信はありましたが、お高いので一般的では非ず。
というわけで、当時の一般消費者にとって最速の情報入手手段が、テレビ(とラジオ)なのです。決まった時間に放送される番組を見ないと最新のニュースや天気予報は入手できないし、翌日の新聞を見ないと株価は分からないのです。

そんな時代に、「文字放送」☆彡
受信にお金がかからず無料で、いろんな情報がタイムリーに入手できるという、大変便利なものでした。


が、当時どのくらいの人が使えていたのかなーという印象です。
なぜなら、この文字放送を視聴する(表示する)には「文字放送チューナー」が必要で、それが高かったのです。

一例として、ソニーの「TXT-5000」。
f:id:tokieng:20181118145125j:plain:w300ソニートリニトロンカラーテレビ/モニター総合カタログ '94.9」より

114,800円

東芝の「文字多重チューナー TT-XA700」。
f:id:tokieng:20181103201935j:plain東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

109,800円

ひええ!高い!

東芝のカタログには、文字放送対応テレビも載っていました。
f:id:tokieng:20181103201934j:plain東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

「21R30M」は、NEW と付いているので、カタログ掲載時点での新製品ですね。
21型4:3ブラウン管、BS非内蔵で、75,000円。

チューナー単体よりも、だいぶ安い。
で、この価格が他の21型テレビと比べてどれほどの価格差があるのか…ですが、他の21型テレビは他メーカーも含めて軒並みオープン価格と記載されているため、比較できず。
95年初頭のこの時期としては、チューナーがあのお値段ですので、「文字放送が見れるのにこのお値段!」という意味ですごく頑張っているんだろうな、という印象です。


パナソニックも文字放送対応テレビが2機種ありました。
TH-29VW20 260,000円。BS内蔵の29型4:3テレビ。
TH-21TX1 155,000円。こちらはBS非内蔵の21型4:3テレビ。
どちらも「画王」シリーズの製品です。(パナソニック「カラーテレビ '95/冬」に掲載)
価格の比較として、同じパナソニックの 29型 TH-29GF20 180,000円。21型 TH-21G10 75,000円。
型番がいろいろと違うので単純な比較は無理があるのかもしれませんが、無視できない価格差ですね(汗)。


そんな文字放送。この時期に最も注力していたのは、シャープでしょう。

ワイドテレビの「ニュースビジョン」
文字放送対応テレビに、ブランド名(シリーズ名)を付けるほどの力の入れ具合です。
手元のシャープ「カラーテレビ総合カタログ1995年2月現在」によると、32型ワイド「32C-WD5」、28型ワイド「28C-WD5」、24型ワイド「24C-WD5」という3機種が一挙に、新製品として登場しています。

同カタログの表紙をめくった1~2ページ目に、見開きの2ページを使って、「ニュースビジョン」の紹介です。
視聴中の映像と重ねて、ニュースやスポーツ情報を画面上方にテロップ表示したり、株価や天気予報を画面右下に表示したり、と様々な表示ができることを説明しています。そしてリモコンにも、それらの情報を表示するための専用ボタンがありました。

文字放送という機能を、分かりやすく製品に取り入れた感じがします。

ダブル画面・9画面マルチサーチ

いくつかのメーカーのテレビには、2画面機能がありました。
とはいっても、画面の右下に小さく表示する「子画面」「PinP(ピクチャーinピクチャー)」は、4:3テレビの時代から存在しました。
ワイドテレビならではなのが、左右に2分割した表示です。

東芝のテレビには、「ダブルウィンドウ」という名前で左右2分割による2画面機能を搭載していました。
カタログでは、表紙から強烈にアピールしていますね。
f:id:tokieng:20181020153940j:plain:h320東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

この表紙は、俳優さんがすごくいい表情で、店頭のテレビを見ながら「これからは、コレだな。」とつぶやいています。東芝の「推し具合」が伝わるようです。

左右どちらにも地上波テレビ放送を表示できるということは、もちろん地上波チューナーが2個搭載されているということです。(高そう…)
カタログでは、見開き2ページで熱く紹介しています。下の画像の左側です。
f:id:tokieng:20181103201834j:plain東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

余談ですが、いくらなんでも、「テレビ」と「ビデオ」の組み合わせで、
ゴルフスイングの一瞬を見比べるのは無理でしょう(笑)。
f:id:tokieng:20181103201835j:plain:w250東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

東芝のテレビに、さらに面白い機能がありました。先ほどの画像の右半分で紹介されている、「9画面マルチサーチ」です。

右側に9つの画面で放送中の番組を映し出し、すべての映像を見ながら、ひと目で気に入った番組を探せます。
東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

地上波チューナーが2個あるので、左側で地上波テレビを見ながら、右側に裏番組を9つ確認できるのですね。実物を見たことがないので、右側9画面が動画なのか静止画なのかは、ちょっと分からないのですが、ザッピングになかなか便利そうな気がします。
ワイド時代ならではの、新しい機能でしたね。

テレビデオ

テレビ+ビデオ=テレビデオ

今では相方の「ビデオ」が無くなったので「テレビデオ」とは呼べなくなりましたが、今もテレビ+レコーダーという製品群はありますよね。
特に三菱が「3つビシッと!」とCMしていますし。

そしてこの頃(1995年頃)も、もちろん各社テレビデオを出していました。
f:id:tokieng:20181103200752j:plain三菱「三菱カラーテレビ総合カタログ 1995年11月作成」より。

三菱のこの製品で特に面白いのが、
リモコン操作でテレビが左右に振り向く機能(オートターン機構)。
隣の部屋や台所からテレビを見たいのに・・・という時に、リモコンを押すだけでテレビが自分に向くように調整できるので、便利ですね。

そして意外にも、23年経った今でもその機能は受け継がれているのです。ビックリ!
最新型の機種(例えばLCD-A40RA1000)にも、その機能は存在しています。

リモコンで画面を見やすい角度にオートターン

LCD-A40RA1000 特長|液晶テレビ|REAL:三菱電機

三菱が受け継いでいるものは他にもあって、ネーミング。
最新型の機種に「らく楽アシスト」「らくらく設定」という機能があります。
そして1995年のこのテレビデオは、その名も「らくちん館ワイド」。

「らく」が三菱のキーワードみたいですね。
今もそのキーワードは三菱の製品群に色濃く息づいているように思います。


また以下の日立のように、「クローズドキャプションデコーダー」機能が付いた機種もあります。
f:id:tokieng:20181103201057j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より

クローズドキャプション」とは、市販のVHSビデオソフトなどに映像と一緒に記録されている字幕情報を、画面に字幕として表示する機能です。今のDVDやBDには、そんな特別な名前はついていないですが、同様に字幕を表示できますよね。


そしてテレビデオといえば、アイワでしょう(個人的感想ですがw)。
f:id:tokieng:20181103202248j:plainアイワ「ビジュアル総合カタログ 1994年12月現在」より。
手元にあるこの「ビジュアル総合1994年12月現在」のカタログには、テレビデオ6機種、ビデオ6機種、LDプレーヤー2機種などが掲載されています。しかも4:3タイプのみ。意外なことに、このカタログにはテレビ単体は載っていませんでした。へー。
あと、当時のアイワはソニーグループなので「スーパートリニトロン管を使っている!」と高画質アピールですね。

ゴーストリダクションチューナー

まずはゴーストの説明が必要でしょう(笑)。

放送をキャッチするのはアンテナの役目ですね。アンテナの位置によって、テレビがきれいに映ったり、映らなかったり、ということが起こります。
デジタル放送の現代では、アンテナの位置によって「きれいに映る」か「途切れ途切れで映る」か「全く映らないか」が変わります。デジタルだから、というだけでなく、様々な工夫も施されているおかげのようですが。

でも、アナログ放送は違います。
「きれいに映る」と「途切れ途切れで(ノイズ交じりで)映る」の間に、たくさんの「きれいに映らない」が存在します。
NECのカタログに、詳しい説明があります。
f:id:tokieng:20181118170941j:plainNEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」より

このような現象を「ゴースト」と呼ぶようです。二重になったり、色がずれたり、とか様々な症状を生みます。
私は電波に疎いのですが、電波塔から発信された電波をアンテナが受信する際に、山やビルに反射した電波までも一緒にアンテナが受け取ってしまうから、ということが原因のようです。
まるで「ヤッホー!」と叫ぶと声が返ってくる、「山びこ」と似ていますね。

ゴーストについては、「日テレ・テクニカル・リソーシズ」さんのブログ記事に、すごく詳しい説明がありました。
www.nitro.co.jp

なにはともあれ、アナログのテレビ放送ではゴーストが悩みの種でした。
それを解消するために、「ゴースト除去チューナー」の出番が出てきます。またそれを内蔵したテレビもありました。
チューナーもテレビも、NECのカタログに掲載されていました。
f:id:tokieng:20181103203159j:plainNEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」より

ゴースト除去チューナー GCT-500、GCT-3000
ゴーストクリア内蔵BSテレビ C-29BS1000

東芝も、ありました。
ゴーストクリーンテレビチューナー TT-GC10
f:id:tokieng:20181103201952j:plain:h300東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

これらのチューナーがゴーストを除去できる原理は、カタログには載っていませんが、NECのカタログには、ヒントがありました。
注意書きの以下の記述です。

次の場合にはゴーストが除去しきれない場合がありますのでご了承ください
(略)
・放送電波にGCR信号の挿入のない場合

テレビ局が、GCR信号(ゴースト除去用基準信号)という信号を出していて、これを使ってごにょごにょ計算するということなのでしょうね。
ゴースト除去用基準信号 - Wikipedia

これも、地上アナログならではの製品ですね。

あと、変わった機種をいくつか…

日立の ゲーム対応 Nextage

まずは、日立の「ゲーム対応 Nextage」をご紹介。
f:id:tokieng:20181103201110j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より

ハイサターンは、日立が発売していたゲーム機です。セガのゲーム機「セガサターン*1」と同じソフトで遊べて、しかもセガサターンよりも多機能、というものでした。
そのハイサターンを簡単に使えるということを売りにした、テレビです。 C-20WM50(モノラル)とC-20WX50(ステレオ)の2機種がカタログに掲載されています。

「話題のゲーム機「ハイサターン」に簡単対応」「本体前面のサターン端子に別売の専用ケーブルで「ハイサターン」をワンタッチ接続」「ハイサターンの電源ONでテレビ電源もONになり、ゲームモードへと自動切換えします」(日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より)
という機能は、結構便利ですね。ゲーム機とテレビの両方を作っている日立ならではの、強みですね。

ゲームポン機能がついた、キララバッソ

ゲーム機と言えば、ソニープレイステーションも。
そのソニーにも、ゲーム機との連携を謳ったテレビがありました。KV-201SW1、KV-16GW1。
f:id:tokieng:20181118175900j:plainソニートリニトロンカラーテレビ/モニター総合カタログ '94.9」より

テレビ前面に、当時では珍しいS端子をつけています。日立のような専用端子ではないので、「ケーブル1本で」というほどまで踏み込んだ機能ではありませんが…。
そして「ゲームボタン」が付いていて、これを押すとテレビの電源が入って、入力が前面入力端子のに切り替わります。

実は日立もソニーも、小型ワイドテレビはこれらのゲーム機能がついた機種だけなので、
ゲーム対応テレビを作ったというよりも、小型ワイドテレビにゲーム対応というプラスアルファの機能を付けたという戦略かな、という気がします。

LD内蔵テレビ

LDとは、レーザーディスクの略です。今で言えば、DVDやBDですね。光ディスクに映像信号を記録します。アナログ信号でしたっけ?

そんなLDプレーヤー内蔵テレビがありました。東芝 24WL20。
f:id:tokieng:20181103201914j:plain東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

LDのソフトにはもちろん映画もありましたが、このテレビのターゲットは「カラオケ」でしょう。
カタログに掲載しているテレビの画像が、どう見てもカラオケです。
スナックや居酒屋、旅館の宴会場などでは「レーザーカラオケ」が主流でした(今は知らない)。
おそらく、そういうニーズに応えるテレビかな、という気がします。

ビデオCDプレイヤー内蔵テレビ

ビデオCDとは、音楽CDと同じディスクに、映像データをデジタルで記録したものです。レーザーディスクは大きくて、プレイヤーもソフトも高価でしたが、ビデオCDはそれよりも安価でした。
長時間の記録ができないので、カラオケだったり語学教材だったり、アイドルやアニメなどの映像ソフトが市販されていたように思います。
映像メディアの本流には、なれなかった規格です。

三菱、日立から、そんなビデオCDが再生できるテレビが発売されていました。ノリはテレビデオですかね。

f:id:tokieng:20181103200811j:plain三菱「三菱カラーテレビ総合カタログ 1995年11月作成」より

f:id:tokieng:20181103201058j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より

ビデオCDだけでなく、もちろん音楽CDも再生できます。CD-GとかフォトCDとか、今となっては説明が必要なメディアも再生できますが、今回は省略…。

冷蔵庫内蔵テレビ!?

f:id:tokieng:20181103201159j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より

日立の CRK-2150。冷蔵庫と一体化した21型テレビ!
意外な組み合わせですね。
でも考えてみたら、旅館やビジネスホテル、公民館や集会所などに、コンパクトでピッタリな気がします。

厚みのあるブラウン管テレビならではの組み合わせですね(笑)。

CDラジカセ内蔵テレビ

パナソニック TH-14AV1。テレビデオに、CDラジカセが付いたという、オールインワン(古っ)なテレビです。

「これ一台で、テレビ、ビデオ、CD、カセット、FMが楽しめる」(パナソニック「カラーテレビ '95/冬」より)とあります。
テレビ上面に、CDラジカセをそのまま付けたような感じの外観です。

すごいなぁ(笑)

さて次回は

前回ちょっと気になった、BSデコーダーについてまとめてみます。
誰も興味ないでしょうけど…(笑)。

本シリーズの記事一覧は、こちらから。
tokieng.hatenablog.com

*1:1994年発売の32ビットゲーム機ですね。ソニープレイステーションと激しい競争をしていました