祝!マイコン博物館オープン!
「マイコン博物館」のご紹介です♪
マイコン博物館って
マイコン博物館とは、月刊アスキーの初代編集長であった吉崎さんによる、私設の資料館です。
「夢の図書館」という、これまた私設の図書館に併設されています。
で、2019年2月に、Twitterでこんなのを発見したので…
これは行かねば!
ということで、行ってきました!
とても面白かったので、当日の様子を簡単に紹介します。
以下は、館長直々にご説明いただいた内容を基に、
私の記憶を頼りに(汗)、私流にまとめたものです。
#違ってたらごめんなさい・・・
「コンピュータの歴史を学ぶセミナー」
まずは、機械式計算機
電子式計算機の前に、世の中には機械式計算機がありました。
これは、うまく組み合わされた歯車を回すことで、計算結果が得られるというものです。
日本で有名なのは、「タイガー計算機」ですね。(炊飯器は作ってません。)
足し算、引き算、掛け算、割り算ができます。
ケース付きで、持ち歩くこともできます。モバイルコンピューティングってやつですか。
多くの計算機が展示されていましたので、あとでまとめてご紹介しましょう。
弾道計算とはなんぞや?!
陸上戦において「敵を発見!さぁ大砲を撃つぞ!」というとき、弾道計算の出番です。
弾をどのように撃つのか?砲台の角度は?方角は?は、重要ですよね。
弾の撃ち方を決めるには、単に敵との距離だけが分かればよいのではなく、高度、気温、湿度、気圧など、数多くの要因が存在するのです。
なので、敵に命中させるためには、
それら多くの要因(パラメータ)を加味して撃ち方を決める必要があります。
それを求めるのが、弾道計算です。
そんな計算を戦地でやってられません。敵を前にして、そんな暇ないです。
というわけで、あらかじめ様々な値を使って計算しておいて、本の形にまとめておけば、戦地でも計算することなく、敵に命中しやすいように弾を撃つことができるわけですね。
たとえば、こんな・・・おぉ!!大正時代の日本陸軍の弾道表!
ひえー、実物見るの初めて!
本の中身はというと、
陸軍少尉のだれそれ博士の理論によるとこういう計算式で値は決まるので、計算した結果こうなりますよ!
という感じでしょうか。
本には、ずらーっと表が続きます。
いろんな数式と、いろんな値が。
それだけたくさんの値が必要なのですね。
つまり、膨大な量の計算が必要です。
大正時代ですから、電卓すら存在しないので、計算はそろばんか機械式計算機ですかね。
たくさんの人を使って、二人一組で計算させていたようです。
当時の科学雑誌に、大勢の人を使って計算している様子(弾道計算ではないでしょうけど)が紹介されていました。(その雑誌は、「夢の図書館」に収蔵されています。)
ちなみに、計算に大勢の人が必要なのは、日本でも海外でも同じ。
英語では計算する(calculate)人のことを、「calculator」と言っていました。
現代においてcalculatorといえば「計算機」、電卓ですね。
つまり、戦うには大量の計算が必要なのです。
他国より優位に戦うためには、大量の計算を速く行うことが重要でした。
アメリカのENIACが、弾道計算を目的としたものというのも、理解できますね。
ENIACは、戦後、弾道計算以外にも使われるようになります。
他国は?
第二次世界大戦における重要な登場アイテムとしては、ドイツの「エニグマ」もありますね。
暗号と復号ができる、暗号機です。
(「Uボート」もセミナーに登場しますが、ここでは割愛)
エニグマが作った暗号文を、エニグマを持たない他国が解読するためにも、計算は必要でした。
イギリスは暗号解読センターで解読しようとしていました。
そのセンターに居たのが、アラン・チューリング氏。「チューリングマシン」の、チューリングさんですね。
暗号解読にも大量の計算が必要なので、彼らは計算機も作りました。
しかしその計算機は、当時公になることはありませんでした。
「暗号が解読できた」と敵に知られたら、暗号方法を変更されてしまうからです。ですので、秘密でした。
暗号解読に従事されていた方々(チューリング氏含む)は、その任務を公にすることはできませんでした。
(秘密が解かれて情報が公開されるまでには、数十年の時間が必要でした。)
当時アメリカも、暗号解読のための計算機を作っていたとかどうとか。もちろん、それも秘密でしたね。
公になってたのは、暗号とは関係のない、弾道計算機でした。
第二次世界大戦が終わったので
アメリカのENIACは、戦後、存在が公になっていました。開発に携わったり利用したエンジニアは多いことでしょう。
コンピュータの技術が大きく進歩したきっかけは、アメリカの「アポロ計画」でした。
マイコン博物館には、そのアポロの実物…は無理ですが、
関係者に配られたという精巧な模型が、展示してあります。(え?写真?撮り忘れましたw)
宇宙空間で宇宙船を制御するために、コンピュータが必要です。
このため、アプロ計画に伴って大量のエンジニアを確保し、様々な新技術が生まれました。
今の時代のメモリ(RAM)といえば、SRAMやDRAMなどの半導体メモリですが、
アポロ計画の頃はといえば、それはコアメモリ(磁気コアメモリ)でした。
よく見ると、丸い輪がたくさんあります。この輪っかを磁化させるかどうかで、0と1を表現するという方式です。
今とはだいぶ違いますね!
アポロ計画は、多くの新技術と、大量のエンジニアを生み出しました。直接的であったり、間接的であったり。
アポロ計画が終了すると、多くのエンジニアがNASAから離れることになります。
そして野に放たれたエンジニアが、彼らの持つ技術を基に、様々なものを世に作り出していくことになります。
館長曰く、マイコン創成期のエンジニアの方々は、NASAで働いていたとか、NASAの仕事を請け負っていたとか、おじさんがNASAで働いていたとかで、最終的にはNASAに繋がるとか…。
そして
ウィリアム・ショックレー氏やロバート・ノイス氏などが活躍して、現在の半導体技術が確立していきます。
いろいろお話を伺いましたが、写真撮ってないので、ここからは省略!(笑)
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ということで
アメリカは、ENIAC(それ以前のものも)によってコンピュータを利用し始めました。そしてアポロ計画という壮大な国家目標を立て、遂行しました。
それらによって、様々な新技術を作り出し、同時にそれら技術に堪能なエンジニアを大量に生み出すことに成功しました。
それが今のコンピュータ産業におけるアメリカの地位に繋がっているように感じます。
かたやイギリスは、第二次世界大戦中に暗号解読機を生み出すものの、公にすることができず、結果としてコンピュータ産業における地位に後れを取ってしまうことになりました。(いまではARMやRaspberry Piを生み出してますけどね!)
大変面白いセミナーでした。
このセミナーは、地域の商店街のイベントの一環として開催されたものです。
でもまた開催されるといいですね!
ご興味ある方は、ぜひ「マイコン博物館」を訪ねてみてください。
今回ご紹介できなかった様々な品が、展示されていますよ。
実は、この日の参加者は私一人だったので(前日は多かったようですが)、博物館も館長も貸し切り状態で、たっぷりお話を伺うことができました♪
せっかくなので、お礼の意味を込めて、「マイコン博物館」により多くの方にご興味を持っていただきたいと思い、ご紹介いたしました。