エンジニアらしき人のひとりごと

100人中100人は興味を示さなくても、100万人居たら1人くらいは面白いと思ってくれそうな、重箱の隅をほじくってみるブログ。

PHSの音とVoLTEの音を比べてみた①

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はじめに

PHS(Personal Handy-phone System)方式の、携帯電話サービスが、かつて(2021年1月31日まで)存在しました。
これ、通話時の音が結構良かったんです。

PHSの登場は1995年。平成7年。

1995年というと…

携帯電話の世界でいえば、
スマホも、i-modeEZwebも、FOMAcdmaOneも登場する前で、
携帯電話会社としてのauが誕生する前(KDDとDDIが合併する前)だし、
ソフトバンクモバイルボーダフォンJ-PHONEが登場する前だし。

Wi-Fiも無いし、家庭にインターネット回線なんてほとんど無かったし、
そもそもパソコンが無い家が多かったくらいだし。
Googleも無かったし、Yahoo!アメリカで誕生したばっかりで日本への上陸前だったし。

ゲーム機の世界でいえば、
3DOセガサターンプレイステーションが登場した頃(1994年末)で、
任天堂の当時の最上位機種は「スーパーファミコン」だったし、
ゲームボーイも白黒画面しか無かった頃だし、

テレビはほとんどブラウン管で、録画機器はVHSビデオデッキだったし。

…と、そんな時代に登場した通信技術を提供するサービスが、25年間も存在し続けたんですね。

そんなPHSの特長として、当時の他の携帯電話(2G(PDC), 3G(W-CDMA, cdmaOne))と比べて、「音が良い」「高音質」ということが挙げられます。

そこで、
PHSと、最新の通話技術である VoLTE との音を比較してみました

ちなみにPHSと3G(W-CDMA)との比較も行っていて、別記事にまとめていますので、そちらもご覧くださいませ。

PHSの音は、3Gと比べると、自然で、聞きやすい感じ。
3Gの場合は、機械的な音の印象があります。(個人の感想です)
騒音の中だと、その違いは顕著にでてました。

VoLTEとの音を比較したよ

MP3プレイヤーからの音を、電話回線を経由してパソコンで録音してみました。
今回は以下の構成です。

  • PHS回線:京セラ WX12K → エイビット イエデンワ2
  • VoLTE回線:Pixel 4a(5G) (ソフトバンク回線) → iPhone SE2(ワイモバイル回線)
  • VoLTE(HD+)回線: iPhoneSE2(ドコモ回線) → Pixel 4a(5G) (ドコモ回線)

iPhone SE2自体はVoLTE(HD+) に対応していますが、ワイモバイル回線側がiPhoneのVoLTE(HD+)に対応していないので、
iPhone SE2 + ワイモバイル回線 によって、ノーマルVoLTE環境を作りました。

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今回の構成

比較用に、MP3プレイヤーとパソコンを直接繋いだものも録音してます。
(で、合計4パターン)

そのほか使用した機材は、以下の通り。

  • 録音機材:DELL ノートPC + Audacity
  • 音源:ソニー ICD-PX240(ソニー ICレコーダー 4GB 単4電池対応 ICD-PX240
  • ケーブル
    • エレコム AV-35AD02BK(通常の3極 ⇔ イヤホンマイクの4極に変換する)
    • アップル Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ(iPhoneのLightning端子にイヤホンマイクを接続する)
    • 京セラ イヤホン変換ケーブル(WX12KのUSB端子にイヤホンマイクを接続する)
    • 自作のRJ-9 - 3.5mmオーディオケーブル変換ケーブル(イエデンワ2の受話器用端子から、パソコンに接続する)

音源としてMP3プレイヤーを使用して、3.5mmオーディオケーブルによってMP3プレイヤーと各種電話機を接続。
録音も、3.5mmオーディオケーブルを介して、パソコンと接続しました。
ちなみにイエデンワ2には、オーディオケーブルを接続する端子が無いので、受話器とつながる端子(RJ-9)に刺さるケーブルを自作しました。

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イエデンワ2用オーディオケーブル

では、実際に聞いてみましょう。

①ナレーション編

動画を公開しています。

ナレーションのみ
ナレーション+小鳥のさえずり
ナレーション+滝の音
ナレーション+街の音
の4つのケースで、各々4つの方法で録音したものを、順に再生します。
PHS (PHS回線を経由した音を録音したもの)
 ↓
VoLTE (VoLTE回線を経由した音を録音したもの)
 ↓
VoLTE(HD+) (VoLTE(HD+)回線を経由した音を以下略)
 ↓
音源(MP3プレイヤーの音をry)

PHSとVoLTEスマホの音質比較 ①ナレーション編 - ニコニコ動画

ヘッドフォン推奨です。(音量に気を付けてください)

今回も、音声データは以下のものを利用させていただきました。

以上終了。

なのですが、ここからも、「音」の知識ゼロな私による、個人の感想が並びますw

まずはナレーションのみで比較

静かな環境で会話したという想定です。

PHSは、ノイズが乗ってますね。イエデンワ2側の都合なのかな…。
(イエデンワ2以外同士で通話した時は、ノイズは気にならなかったのですけどね)
まぁこれしかデータが無いので、これを今回の基準としましょう。
(だってこの記事は、VoLTEはPHSと比べてどうなのか、なので…)

VoLTEは…
おぉ。違いがよく分かりますね。
ノイズが無いのと、PHSよりも高い音が出ているような感じがするので、PHSよりクリアな印象を受けます。
まぁ若干人工的な感じもしなくはないですが、3G(W-CDMA)と比べると格段の進化です。

VoLTE(HD+)は、よりクリアな印象がします。
人工的な感じや違和感は、ほとんど感じない気がします。

グラフも載せてみましょう。
上から、PHS・VoLTE・VoLTE(HD+)・音源で、それぞれ音の大きさと、周波数の分布を表現しています。

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PHS vs VoLTE

PHSで含んでいる音の周波数は、概ね4kHzまで。
4kHzまでの薄い青色の帯は、「サー」というノイズですね。
聴いても見ても分かります。

VoLTEはというと、PHSより高い8kHzまでの音が出ているのが分かります。
あと薄い青色の帯が無いので、ノイズが無いのも視覚的に分かりますね。

VoLTE(HD+)は、もっと高音が出ていますね。
どこまでの高い音が出ているか、周波数分布のグラフの上限を22kHzまで大きくして、見てみましょう。

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VoLTE(HD+)はどこまで高音が出ている?

上から3つ目がVoLTE(HD+)。ざっと、15kHzくらいまでは出てますね。
電話として、十分すごい。

静かな環境での通話は、
VoLTE、VoLTE(HD+)は、PHSと比べても、満足いくものになってるかなと思います。

ということで、騒音を足してみた

静かな環境では、なかなか好印象なVoLTEとVoLTE(HD+)。
今度は、3種類の騒音を足して、試してみました。

  • 小鳥のさえずり
  • 滝の音
  • 街の音

まずは、小鳥のさえずり

もう一度聞いてみましょうか。
 → PHSとVoLTEスマホの音質比較 ①ナレーション編 - ニコニコ動画 (途中から再生します)

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ナレーション+小鳥のさえずり

周波数のグラフでは、点が横に連なってますが、これが小鳥のピヨピヨですね。
綺麗に並んでますねー。

で、一番下の音源のグラフでは、1.4kHzまで薄い青色があるので、これは小鳥のさえずりを録音した時の、環境音でしょう。
その薄い青色に着目しましょう。

一番上のPHSでは、まぁノイズまみれですが、やや青みが強くなっているので、うっすらと環境音も入ってる感じがします。

で、上から2つ目のVoLTEと、上から3つ目のVoLTE(HD+)は、
最初はうっすら青く環境音が入ってますが、興味深いことに、3秒経つと減ってますね。

VoLTEは、3秒経つと環境音が完全に消えていて、
VoLTE(HD+)では、3秒経つとガクンと減って、その後ナレーション(人の声)が始まったころに、ほぼ消えています。

今回の実験時の様々な影響もあるでしょうから、常に同じ結果とは限らないでしょうが、「数秒経つと、環境音っぽいものは消える」という感じ。
VoLTEが行おうとしているデータの効率化が、なんとなく垣間見える気がします。

VoLTE、VoLTE(HD+)ともに、ノイズが無い分、聞きやすいですね。
声は、若干、人工的な雰囲気が出ている気はします。でも大きな違和感はないように思います。

滝の音を足してみた

足したら、こんな結果に。
 →PHSとVoLTEスマホの音質比較 ①ナレーション編 - ニコニコ動画 (途中から再生します)

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ナレーション+滝の音

PHSは、滝の音と言えば滝の音。波のような、水の流れる音が含まれている感じがします。
声が「ざわざわ」して聞こえるのは、4つ目の「音源」でもそう聞こえるので、録音側の問題なのかも。

VoLTE、VoLTE(HD+)は、再生から4秒程は滝の音が含まれていますが、その後スパッと消えますね。唐突に消える感じ。小鳥の時と、同じ傾向ですね。
その影響なのか、人の声が不自然なものになっている感じがします。音が詰まっているような、なんか圧迫した感じというか。
人工的な雰囲気が、より強くなった気がします。

滝の音が声にどの程度影響を与えているのか、「本日は」の部分を、滝の音の有無のグラフで比べてみましょう。

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VoLTE(HD+)による、「本日は」のみ(滝の音:無し)
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VoLTE(HD+)による、「本日は」+「滝の音」

かなり違いますね。人の声が欠けていることが、視覚的にも分かります。
滝の音を消したので人の声も一部が欠けてしまい、そのために不自然で人工的な感じのする声になった…ように思えます。

まぁホワイトノイズっぽい音を足したので、ちょっと特殊なケースなのかもしれませんが。

街の音を足してみた

足したら、こんな結果に。
 →PHSとVoLTEスマホの音質比較 ①ナレーション編 - ニコニコ動画 (途中から再生します)

PHSは、街の音が聞こえますね。
冒頭にメロディ聞こえますか?これ、横断歩道の誘導メロディです。
https://www.youtube.com/watch?v=DFEKQ1cRVKE故郷の空」というタイトルらしいです。
車やバイクが通りすぎる音も、聞こえます。
「いま外出中です」ということが、分かる感じですね。

VoLTEは、車やバイクが通り過ぎる音など、聞こえないですね。
雑音がほとんど無く、ところどころ機械的な音として聞こえる程度です。
屋外というよりも、室内の静かな部屋に居るという感じがします。
音声は、雑音が無い分クリアですが、人工的で不自然な印象です。

VoLTE(HD+)も、傾向はVoLTEと似ていますね。
まず雑音が無い。これも、室内の静かな部屋に居る感じがします。
ただ音声は、VoLTEと比べると、違和感は少ないです。

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ナレーション+街の音

音声部分の傾向としては、滝の時と似た感じがします。
ということで、冒頭部分を拡大して、いくつかのポイントに印をつけみました。

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冒頭部分の拡大

 黄緑色:バイクが通りすぎる音
 赤色:クラクション
 黄色:自転車のブレーキ音
 濃緑色:車が通りすぎる音

PHSでは、
黄緑色、赤色、濃緑色のところの、車やバイクが通りすぎる音も、聞こえます。
黄色のところでは、自転車のブレーキ音が4kHzよりも高いので、聞こえてこないですね。

VoLTEでは、
黄緑色のところは、一瞬メロディが聞こえるものの、バイクが通り過ぎる音というよりも機械的な音がします。
赤色は、クラクションがよく聞こえます。
黄色は、自転車のブレーキ音は聞こえません。
濃緑色は、変な機械的なノイズになってしまってます。

VoLTE(HD+)では、
黄緑色の箇所が無く、
赤色のクラクションも聞こえます。
黄色のところの自転車のブレーキ音は、若干含まれてるものの、変なノイズになってますね。
濃緑色のところは、意外にもほとんど含まれてない感じです。騒音としてうまく消せたのかな。

まとめると

VoLTE、VoLTE(HD+)の音声について、個人的感想をまとめると、静かな環境で話す人の声であれば、PHSよりもクリアに聞こえます。

ただ、「滝の音」「街の音」を聞くと分かると思いますが、騒音がある環境で話す人の声は、やはり機械的な感じがします。
「人の声+騒音」から、騒音を取り除いていることが影響して、
人の声の成分が失われているのではないかという印象です。

VoLTE、VoLTE(HD+)は、「人の声」だけを伝えることに特化しているような感じがします。
この傾向は、3Gの場合と同じですね。

ただ、3Gと比べると、すべての場合においてVoLTE、VoLTE(HD+)が「聞き取りやすい」と思います。

PHSの音に慣れた人にとってはやはり、機械的な声と騒音を削っていることに、場合によっては違和感を覚えることになるなぁ、といったところです。

次は、音楽を流した時を比べてみましょう。
tokieng.hatenablog.com