エンジニアらしき人のひとりごと

100人中100人は興味を示さなくても、100万人居たら1人くらいは面白いと思ってくれそうな、重箱の隅をほじくってみるブログ。

電卓の奥深い世界 ~序章~ カシオとシャープとキャノンとシチズンの電卓を見分けてみる

こんにちは。
この記事をご覧になるということは、さては電卓にご興味がおありですよね?
ですよね?

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1台あれば十分なのに、いつの間にか電卓がこんなに…

それでは、この記事を読む前に、あなたがお持ちの電卓をお手元にご用意ください
スマホのアプリではなく、物理的な「電卓」をお願いします。

どの電卓も、
 1 + 1 =
と入力すると、 田んぼの田 2 が得られるはずです。
そこには電卓のメーカー差というのはありません。あったら大変です。
ですが、知っている方は知っていると思いますが、メーカーによって微妙に動作が異なるんです。

大したことはしないのですが、私からいくつかの質問をします。
あなたには実際に、メーカーごとに微妙に動作が異なる、ある操作をしていただきます。
それに回答いただくことで、あなたの手元にある電卓のメーカーを、ズバッと当ててみましょう🎉

あ、「カシオ計算機(以下、カシオと略)」「キャノン」「シャープ」「シチズン」「アスカ(Asmix)」のいずれかの電卓でお願いしますm(_ _)m
100円ショップの電卓は、メーカー名の記載がなく、何種類あるのか調査できないため、除外です。


ちなみに今回のメーカー当てには、「定数計算」「逆数」は使いませんよ♪
(何のことかは、たぶん次回の記事に出てきます)

まずは、電卓の状態を、何も計算していない状態にしましょう。

ACボタンがある機種は、ACボタンを押します。
CAボタンがある機種は、CAボタンをします。ON/CAも同じです。
ACCAもない機種は、Cボタンを2回押します。ON/Cも同じです。

そして、MCボタンがある機種は、MCボタンを押して、再度ACCACボタンを押します。
MRCボタンがある機種は、MRCボタンを2回押して、再度ACCACボタンを押します

液晶には、「M」も「E」も表示されていない状態になりましたか?

これ以降の説明で「電卓をクリアしましょう」という文言が出てきたら、上の操作を行ってください。

準備ができたところで、では・・・。



Q1

8桁入力できる電卓なら8回、10桁入力できる電卓なら10回、12桁入力できる電卓なら12回、ボタンを押します。
そしてM+ボタンを2回押します。

液晶の表示は、どうなりましたか?

  • 「1.99999999999」というような数字が表示され、「E」が点灯し、「M」が点滅している

 → Q2へ

  • 「1.99999999999」というような数字が表示され、「M」と「E」が点灯している

 → Q3へ

  • 「0.」が表示され、「M」と「E」が点灯している

 → Q4へ

Q2

そのとき、ボタンを押すと、どうなりますか?

  • 液晶の「E」という表示が消える

 →Q5へ

  • 液晶表示は、何も変わらない

 →Q6へ

Q3

もしかして、その電卓は「シチズン(CITIZEN)」?

Q4

さて、「電卓をクリアしましょう」(上のグレーの枠を参照)。
そしてボタンを、13回以上(入力できる桁数より多く)押します。
液晶表示は、どうなりますか?

  • 「E」が点灯する

 → Q7へ

  • 「E」は点灯しない

 → Q8へ

Q5

もしかして、その電卓は「キャノン(Canon)」?

Q6

もしかして、その電卓は「アスカ(Asmix)」?

Q7

もしかして、その電卓は「シャープ(SHARP)」?

Q8

もう一回、「電卓をクリアしましょう」(上のグレーの枠を参照)。
と順に押したとき、
液晶表示はどうなりますか?

  • 「5」になる

 → Q9へ

  • 「-5」になる

 → Q10

Q9

もしかして、その電卓は「カシオ(CASIO)」?

Q10

もしかしてその電卓は、カシオでもなく、シャープでもなく、キャノンでもなく、シチズンでもなく、アスカ(Asmix)でもない、それ以外のメーカー?
私の手元にある、100円ショップで売ってる電卓は、これになりました。


当たりましたか?
外れたらごめんなさい。というか、その電卓のメーカー名と機種名を教えてください(笑)。

電卓って、メーカーごとに微妙に違うんですよね。

世間では、各メーカーの電卓を大きくグループ分けすると、
 カシオの電卓
 シャープ・キャノン・シチズンの電卓
という2グループに分類することが多い(普通の人はそもそも電卓を分類しない?😅)のですが、実は微妙に違うのです。

次回は、そんな各メーカーの電卓の微妙な違いをまとめてみます。

tokieng.hatenablog.com

そして、パソコン、スマートフォン(iPhoneAndroid)に対応した、電卓アプリ作りました🎵
その名も「ときたく」。

詳しくは、こちら↓
tokieng.hatenablog.com

祝・「マイコン博物館」オープン!「コンピュータの歴史を学ぶセミナー」の受講メモ

祝!マイコン博物館オープン!

マイコン博物館」のご紹介です♪

マイコン博物館って

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マイコン博物館(仮オープン時の様子)

マイコン博物館とは、月刊アスキーの初代編集長であった吉崎さんによる、私設の資料館です。
「夢の図書館」という、これまた私設の図書館に併設されています。

で、2019年2月に、Twitterでこんなのを発見したので…

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Twitterセミナーの告知が!

これは行かねば!

ということで、

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東青梅まで行ってきた!
行ってきました!


とても面白かったので、当日の様子を簡単に紹介します。
以下は、館長直々にご説明いただいた内容を基に、
私の記憶を頼りに(汗)、私流にまとめたものです。
#違ってたらごめんなさい・・・

ちなみに、セミナーの内容の一部です。
全部知りたい方は、ぜひ「夢の図書館」「マイコン博物館」へ!

「コンピュータの歴史を学ぶセミナー」

まずは、機械式計算機

電子式計算機の前に、世の中には機械式計算機がありました。
これは、うまく組み合わされた歯車を回すことで、計算結果が得られるというものです。
日本で有名なのは、「タイガー計算機」ですね。(炊飯器は作ってません。)
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足し算、引き算、掛け算、割り算ができます。

ケース付きで、持ち歩くこともできます。モバイルコンピューティングってやつですか。
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多くの計算機が展示されていましたので、あとでまとめてご紹介しましょう。

そしてENIAC

歴史的に有名なコンピュータ、といえばENIACですよね。
第二次世界大戦中にアメリカ陸軍が開発した、弾道計算のための計算機です。

そう、弾道計算のためです。

弾道計算とはなんぞや?!

陸上戦において「敵を発見!さぁ大砲を撃つぞ!」というとき、弾道計算の出番です。

弾をどのように撃つのか?砲台の角度は?方角は?は、重要ですよね。

弾の撃ち方を決めるには、単に敵との距離だけが分かればよいのではなく、高度、気温、湿度、気圧など、数多くの要因が存在するのです。
なので、敵に命中させるためには、
それら多くの要因(パラメータ)を加味して撃ち方を決める必要があります。
それを求めるのが、弾道計算です。

そんな計算を戦地でやってられません。敵を前にして、そんな暇ないです。

というわけで、あらかじめ様々な値を使って計算しておいて、本の形にまとめておけば、戦地でも計算することなく、敵に命中しやすいように弾を撃つことができるわけですね。

たとえば、こんな・・・

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おぉ!!大正時代の日本陸軍の弾道表!
ひえー、実物見るの初めて!

本の中身はというと、
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陸軍少尉のだれそれ博士の理論によるとこういう計算式で値は決まるので、計算した結果こうなりますよ!
という感じでしょうか。

本には、ずらーっと表が続きます。
いろんな数式と、いろんな値が。
それだけたくさんの値が必要なのですね。

つまり、膨大な量の計算が必要です。

大正時代ですから、電卓すら存在しないので、計算はそろばんか機械式計算機ですかね。
たくさんの人を使って、二人一組で計算させていたようです。

当時の科学雑誌に、大勢の人を使って計算している様子(弾道計算ではないでしょうけど)が紹介されていました。(その雑誌は、「夢の図書館」に収蔵されています。)


ちなみに、計算に大勢の人が必要なのは、日本でも海外でも同じ。
英語では計算する(calculate)人のことを、「calculator」と言っていました。
現代においてcalculatorといえば「計算機」、電卓ですね。

つまり、戦うには大量の計算が必要なのです。
他国より優位に戦うためには、大量の計算を速く行うことが重要でした。

アメリカのENIACが、弾道計算を目的としたものというのも、理解できますね。
ENIACは、戦後、弾道計算以外にも使われるようになります。

他国は?

第二次世界大戦における重要な登場アイテムとしては、ドイツの「エニグマ」もありますね。
暗号と復号ができる、暗号機です。
(「Uボート」もセミナーに登場しますが、ここでは割愛)

エニグマが作った暗号文を、エニグマを持たない他国が解読するためにも、計算は必要でした。
イギリスは暗号解読センターで解読しようとしていました。
そのセンターに居たのが、アラン・チューリング氏。「チューリングマシン」の、チューリングさんですね。
暗号解読にも大量の計算が必要なので、彼らは計算機も作りました。
しかしその計算機は、当時公になることはありませんでした。
「暗号が解読できた」と敵に知られたら、暗号方法を変更されてしまうからです。ですので、秘密でした。
暗号解読に従事されていた方々(チューリング氏含む)は、その任務を公にすることはできませんでした。
(秘密が解かれて情報が公開されるまでには、数十年の時間が必要でした。)

当時アメリカも、暗号解読のための計算機を作っていたとかどうとか。もちろん、それも秘密でしたね。
公になってたのは、暗号とは関係のない、弾道計算機でした。

第二次世界大戦が終わったので

アメリカのENIACは、戦後、存在が公になっていました。開発に携わったり利用したエンジニアは多いことでしょう。
コンピュータの技術が大きく進歩したきっかけは、アメリカの「アポロ計画」でした。
マイコン博物館には、そのアポロの実物…は無理ですが、
関係者に配られたという精巧な模型が、展示してあります。(え?写真?撮り忘れましたw)

宇宙空間で宇宙船を制御するために、コンピュータが必要です。
このため、アプロ計画に伴って大量のエンジニアを確保し、様々な新技術が生まれました。

今の時代のメモリ(RAM)といえば、SRAMDRAMなどの半導体メモリですが、
アポロ計画の頃はといえば、それはコアメモリ(磁気コアメモリ)でした。

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このコアメモリも展示品です

よく見ると、丸い輪がたくさんあります。f:id:tokieng:20190224154334j:plainこの輪っかを磁化させるかどうかで、0と1を表現するという方式です。
今とはだいぶ違いますね!

アポロ計画は、多くの新技術と、大量のエンジニアを生み出しました。直接的であったり、間接的であったり。
アポロ計画が終了すると、多くのエンジニアがNASAから離れることになります。
そして野に放たれたエンジニアが、彼らの持つ技術を基に、様々なものを世に作り出していくことになります。

館長曰く、マイコン創成期のエンジニアの方々は、NASAで働いていたとか、NASAの仕事を請け負っていたとか、おじさんがNASAで働いていたとかで、最終的にはNASAに繋がるとか…。

そして

ウィリアム・ショックレー氏やロバート・ノイス氏などが活躍して、現在の半導体技術が確立していきます。
いろいろお話を伺いましたが、写真撮ってないので、ここからは省略!(笑)

この時代の話は、かつてのNHKスペシャル「電子立国日本の自叙伝」がむちゃくちゃ面白いので、強くオススメです。
Amazonの広告を貼っておきますが、各地の図書館や、NHKの放送局で無料で見ることができます。書籍版もあります。

ということで

アメリカは、ENIAC(それ以前のものも)によってコンピュータを利用し始めました。そしてアポロ計画という壮大な国家目標を立て、遂行しました。
それらによって、様々な新技術を作り出し、同時にそれら技術に堪能なエンジニアを大量に生み出すことに成功しました。
それが今のコンピュータ産業におけるアメリカの地位に繋がっているように感じます。
かたやイギリスは、第二次世界大戦中に暗号解読機を生み出すものの、公にすることができず、結果としてコンピュータ産業における地位に後れを取ってしまうことになりました。(いまではARMやRaspberry Piを生み出してますけどね!)

大変面白いセミナーでした。
このセミナーは、地域の商店街のイベントの一環として開催されたものです。
でもまた開催されるといいですね!

ご興味ある方は、ぜひ「マイコン博物館」を訪ねてみてください。
今回ご紹介できなかった様々な品が、展示されていますよ。

実は、この日の参加者は私一人だったので(前日は多かったようですが)、博物館も館長も貸し切り状態で、たっぷりお話を伺うことができました♪
せっかくなので、お礼の意味を込めて、「マイコン博物館」により多くの方にご興味を持っていただきたいと思い、ご紹介いたしました。

マイコン博物館」の展示品のご紹介!

ここまで、実は「マイコン」が出てきてませんw
展示品には多くのマイコンがあるのですが、だいぶ長くなったので、それは次回にしますw

テレビ24年間の進化③ アナログBS時代の、WOWOW録画との格闘

新4K8K衛星放送(新4K8K放送、新4K放送、スーパーハイビジョン放送、8K放送とも)が、いよいよ2018年12月に始まります。
それを記念して、私の手元にあるカタログの情報をベースに、24年間のテレビの進化についてまとめようとしています。

本シリーズの記事一覧は、こちらから。
tokieng.hatenablog.com

で、その3回目。

今回は、NECの「VA総合カタログ 1995 SUMMER」に小さく掲載されていた、この機能に着目します。

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NEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」より

その名も、「パラボーラセレクト端子」。

なんじゃこりゃ、意味わからん。

これがあると、WOWOWの録画が便利になるの?よく分からん…。

ということで、いろいろ考えてましたよ、という話です。


・・・え?興味ない?w

そもそも、当時のテレビの背面って

例えば、BSアナログチューナー内蔵の NEC の C-25BG1 というテレビの背面は、こんな様子でした。

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NEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」より

端子がいっぱいあります。
これを全部使った人は、果たして世の中にどれくらいいるんだろう?というくらいたくさんの端子が並んでますね。
今回の話題は、この左側。上から2~4段目の端子群です。

パラボーラセレクト端子=検波入力端子+ビットストリーム入力端子

で。NECのカタログの「パラボーラセレクト端子」とは、おそらくテレビ背面の「外部入力」の、「検波」と「ビットストリーム」のことでしょう。この記事では、「検波入力」「ビットストリーム入力」と呼ぶことにします。

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NEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」より
「BS内蔵VTR」が出力する検波信号とビットストリーム信号を受け取るので、テレビとしては「入力」ですね。

「検波」「ビットストリーム」?

WOWOWは有料放送なので、契約している人以外は視聴できません。そのため、放送にはスクランブル(暗号)がかかっていて、それを解除するためのデコーダ(以下WOWOWデコーダ)が必要になります。
検波信号とビットストリーム信号は、そのWOWOWデコーダが使用する信号なのです。
参考: WOWOWBSチューナー接続ガイド

WOWOWを視聴するまでの流れ

さて、ここからは私の汚い図で説明しましょう。
WOWOWデコーダとテレビは、以下のように接続します。

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図1:WOWOWデコーダとテレビを繋ぐ

こう接続することで、テレビでBS-5chを選局するだけで、WOWOWデコーダを操作することなく、WOWOWを視聴することができます。

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図2:テレビでWOWOWを視聴できる
テレビは、BSを受信すると、検波信号とビットストリーム信号を、WOWOWデコーダに出力します。
WOWOWデコーダは、その2つの信号を受け取って、スクランブルを解除した映像・音声を生成し、黄・白・赤の端子からビデオ・音声信号を出力します。
テレビは、WOWOWデコーダからのビデオ・音声信号を、専用の「スクランブルデコーダ入力端子」で受け取ります。
そしてテレビ側では、「BS-5chを受信したら、スクランブルがかかっている。なのでBSチューナーからの映像を表示するのではなく、スクランブルデコーダ入力端子からのビデオ・音声信号を表示しよう」というような処理をします。

これで、テレビで見れるようになりました。
でも、ビデオで録画もしたいですよね。

WOWOWを録画するための四苦八苦

ここでは話を簡単にするために、BS内蔵ビデオデッキを繋ぎましょう。

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図3:BS内蔵ビデオを追加した
でもこう繋ぐと・・・
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図4:テレビでWOWOWを視聴できるが…
テレビではWOWOWを視聴できますが、
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図5:ビデオでWOWOWの録画ができない
ビデオでWOWOWの録画ができませんね。星取表では、「×」で表現している箇所です。

なので、こう繋いでみましょう。

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図6:WOWOWデコーダをビデオデッキに接続する
すると、
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図7:WOWOWを録画できるようになったが…
BS-5chを選局してWOWOWを録画できるようになりました。
録画予約もバッチリ!

テレビはWOWOWデコーダとは直接繋がっていませんが、ビデオを経由することでWOWOWを視聴できるケースがあります。

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図8:WOWOWを録画できるだけでなく、一応視聴もできる
このときは、テレビはBS-5chを選局するのではなく、「ビデオ1」とかに入力を切り替えることになります。
ちょっと直感的ではないですね。

さらに、テレビでのWOWOWの視聴に、制限が加わります。

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図9:他チャンネルの録画中は、テレビでWOWOWが視聴できない
星取表のテレビの視聴パターンに、「×」の箇所が出てきてしました。
NHK-BSの番組を録画中に、WOWOWが視聴できない」
という問題が発生します。
(ちなみに「」は、「ビデオ1に切り替えれば視聴できる」という意味です)


惜しい。


なんとかして、星取表を全部「○」に、パーフェクトにしたいものです。

ここで登場!検波入力&ビットストリーム入力!

技術者は頑張りました。
「検波入力」と「ビットストリーム入力」を用意してくれたのです。

これを使って、以下のように接続します。赤く強調したのが、今回のポイントとなる箇所です。

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図10:究極の接続方法
ついでに、WOWOWデコーダにはビデオ・音声出力が2系統あるので、それぞれテレビとビデオに繋いでおきます。

テレビにWOWOWデコーダを接続するので、テレビの視聴に関する制限はありませんね。

そしてビデオでWOWOWを録画するときに、「検波入力」と「ビットストリーム入力」は威力を発揮します。
ジャジャン!

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図11:2つの入力端子の威力
なんと、ビデオでWOWOWを録画するときは、ビデオ内蔵のBSチューナーからの検波信号とビットストリーム信号が、テレビを経由してWOWOWデコーダへ届くのです!

素晴らしい!

星取表、パーフェクトです。

カタログに戻ってみる

説明すると長文になってしまうこの便利機能を、NECはコンパクトに下のように…。

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NEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」より

うん。分からん!(苦笑)

でも、手元にあるカタログでは、NECの説明が最も詳細なのです。

他のメーカーは・・・

日立:
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日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より
三菱:
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三菱「三菱カラーテレビ総合カタログ 1995年11月作成」より
三洋:
「Wデコーダ端子」「ビットストリーム入力端子と検波入力端子を装備し、WOWOWのBSデコーダをBSビデオと共有できます。」(三洋「カラーテレビ総合カタログ '95-冬」より)

もっと分からん!

まぁ、あまり詳しく書いても分かってもらえないだろうし、ということで、各社このような扱いなのでしょうね、

ちなみに

検波入力とビットストリーム入力ですが、録画に関する機能なので、テレビというよりはビデオ側に欲しいな、と思いませんか?

そうなんです。
テレビに付けていたのは、私がカタログで確認できた範囲では、上記3メーカーのみでした。

対して、この時期のビデオには、たいていこの端子が付いていたのです。

メーカー名 機能名
NEC パラボーラセレクト端子
日立 ダブルデコーダー端子
三菱 Wデコーダ端子
東芝 Wデコーダ端子
三洋 Wデコーダ
ソニー Wデコーダー端子
ビクター Wデコーダ端子
シャープ Wデコーダ端子
パナソニック BSフリーデコーダ

機能名の主流は「Wデコーダ(端子)」ですね。
でもこれだと「デコーダが2台接続できる」と読んでしまいそうですが、はたして、理解できる人がどれくらいいたんでしょうね?
カタログ上の説明も、ほんの1~2文程度で、図も無し。
各社、説明に苦労していたんだろうなぁと邪推してしまいます。

そんな中、図を使って何とかして伝えようとしているNEC。さすが、通信屋さんだなぁ!(褒めてる)

今のWOWOW録画は

今は BSデジタルチューナーにスクランブルを解除する機能が備わっているのと、B-CASカード があるので、機器の接続は簡単になりました。
当時のような「WOWOWデコーダー」とかいう装置は不要ですね。

契約情報が書き込まれているB-CASカードを、レコーダーに挿入すると録画ができます。
このとき、ちょうど上の図7と図8にようになります。

ですので、このままではテレビで直接視聴できません。B-CASカードをテレビに差し替える必要があります。

あれま、パーフェクトではない!

これなら、BSアナログの時代が、まだ便利だったかも(笑)

最後に

当時の家電製品やカタログには、こんな「?」がいっぱいです。
当時の私も、カタログや取扱説明書を読んでも理解できない機能だらけでした。
今も、各メーカーがいろんな試行錯誤を繰り返しながら技術が進化していったおかげで、当時よりもはるかに使いやすい製品が作られているんだなー、と感じる、今日この頃です。

さて、次回はそろそろ時代を進めていこうと思います。

本シリーズの記事一覧は、こちらから。
tokieng.hatenablog.com

テレビ24年間の進化② 1995年頃のテレビの機能

新4K8K衛星放送(新4K8K放送、新4K放送、8K放送とも)が、いよいよ2018年12月に始まります。
それを記念して、私の手元にあるカタログの情報をベースに、24年間のテレビの進化についてまとめようとしています。

本シリーズの記事一覧は、こちらから。
tokieng.hatenablog.com

で、その2回目です。

テレビといえば放送波の映像を映し出すのが目的の装置ですが、それ以外にも様々な機能がありますよね。
現代(2018年)のテレビの機能といえば、YouTubeなどインターネットで配信されている動画を再生したり、音声で操作できたり、USB-HDDを繋ぐと録画できたり、などなど。

今回は、1994~1995年前半のテレビの機能を振り返ってみることにします。

このころは、パソコンで言えばWindows95が出た時期です。「マルチメディア」という言葉が流行りだしたころ、でしょうか。
テレビにも、「マルチメディア」の風の香りが、届き始めていました。

文字放送

「文字放送」とは、簡単に言えば、今で言う地デジ・BSデジタル放送におけるデータ放送(リモコンの「dボタン」を押したときに表示されるアレ)と同じようなものです。
当時の地上アナログテレビ放送でも、テレビの映像・音声用信号と一緒に、文字データを放送していました。「文字多重放送」や、もう少し時代が進むと「モジネット」という愛称でも呼ばれていました。

文字放送では、ニュース、天気予報、交通情報、株価、競馬情報などがいつでも得られます。同じ仕組みを使って、テレビ番組によっては字幕放送も行っていました。

当時を振り返ると、インターネットなんて、研究機関か極一部の企業でしか使われていなかった時代。スマホi-modeも無かった時代なのです。パソコン通信はありましたが、お高いので一般的では非ず。
というわけで、当時の一般消費者にとって最速の情報入手手段が、テレビ(とラジオ)なのです。決まった時間に放送される番組を見ないと最新のニュースや天気予報は入手できないし、翌日の新聞を見ないと株価は分からないのです。

そんな時代に、「文字放送」☆彡
受信にお金がかからず無料で、いろんな情報がタイムリーに入手できるという、大変便利なものでした。


が、当時どのくらいの人が使えていたのかなーという印象です。
なぜなら、この文字放送を視聴する(表示する)には「文字放送チューナー」が必要で、それが高かったのです。

一例として、ソニーの「TXT-5000」。
f:id:tokieng:20181118145125j:plain:w300ソニートリニトロンカラーテレビ/モニター総合カタログ '94.9」より

114,800円

東芝の「文字多重チューナー TT-XA700」。
f:id:tokieng:20181103201935j:plain東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

109,800円

ひええ!高い!

東芝のカタログには、文字放送対応テレビも載っていました。
f:id:tokieng:20181103201934j:plain東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

「21R30M」は、NEW と付いているので、カタログ掲載時点での新製品ですね。
21型4:3ブラウン管、BS非内蔵で、75,000円。

チューナー単体よりも、だいぶ安い。
で、この価格が他の21型テレビと比べてどれほどの価格差があるのか…ですが、他の21型テレビは他メーカーも含めて軒並みオープン価格と記載されているため、比較できず。
95年初頭のこの時期としては、チューナーがあのお値段ですので、「文字放送が見れるのにこのお値段!」という意味ですごく頑張っているんだろうな、という印象です。


パナソニックも文字放送対応テレビが2機種ありました。
TH-29VW20 260,000円。BS内蔵の29型4:3テレビ。
TH-21TX1 155,000円。こちらはBS非内蔵の21型4:3テレビ。
どちらも「画王」シリーズの製品です。(パナソニック「カラーテレビ '95/冬」に掲載)
価格の比較として、同じパナソニックの 29型 TH-29GF20 180,000円。21型 TH-21G10 75,000円。
型番がいろいろと違うので単純な比較は無理があるのかもしれませんが、無視できない価格差ですね(汗)。


そんな文字放送。この時期に最も注力していたのは、シャープでしょう。

ワイドテレビの「ニュースビジョン」
文字放送対応テレビに、ブランド名(シリーズ名)を付けるほどの力の入れ具合です。
手元のシャープ「カラーテレビ総合カタログ1995年2月現在」によると、32型ワイド「32C-WD5」、28型ワイド「28C-WD5」、24型ワイド「24C-WD5」という3機種が一挙に、新製品として登場しています。

同カタログの表紙をめくった1~2ページ目に、見開きの2ページを使って、「ニュースビジョン」の紹介です。
視聴中の映像と重ねて、ニュースやスポーツ情報を画面上方にテロップ表示したり、株価や天気予報を画面右下に表示したり、と様々な表示ができることを説明しています。そしてリモコンにも、それらの情報を表示するための専用ボタンがありました。

文字放送という機能を、分かりやすく製品に取り入れた感じがします。

ダブル画面・9画面マルチサーチ

いくつかのメーカーのテレビには、2画面機能がありました。
とはいっても、画面の右下に小さく表示する「子画面」「PinP(ピクチャーinピクチャー)」は、4:3テレビの時代から存在しました。
ワイドテレビならではなのが、左右に2分割した表示です。

東芝のテレビには、「ダブルウィンドウ」という名前で左右2分割による2画面機能を搭載していました。
カタログでは、表紙から強烈にアピールしていますね。
f:id:tokieng:20181020153940j:plain:h320東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

この表紙は、俳優さんがすごくいい表情で、店頭のテレビを見ながら「これからは、コレだな。」とつぶやいています。東芝の「推し具合」が伝わるようです。

左右どちらにも地上波テレビ放送を表示できるということは、もちろん地上波チューナーが2個搭載されているということです。(高そう…)
カタログでは、見開き2ページで熱く紹介しています。下の画像の左側です。
f:id:tokieng:20181103201834j:plain東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

余談ですが、いくらなんでも、「テレビ」と「ビデオ」の組み合わせで、
ゴルフスイングの一瞬を見比べるのは無理でしょう(笑)。
f:id:tokieng:20181103201835j:plain:w250東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

東芝のテレビに、さらに面白い機能がありました。先ほどの画像の右半分で紹介されている、「9画面マルチサーチ」です。

右側に9つの画面で放送中の番組を映し出し、すべての映像を見ながら、ひと目で気に入った番組を探せます。
東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

地上波チューナーが2個あるので、左側で地上波テレビを見ながら、右側に裏番組を9つ確認できるのですね。実物を見たことがないので、右側9画面が動画なのか静止画なのかは、ちょっと分からないのですが、ザッピングになかなか便利そうな気がします。
ワイド時代ならではの、新しい機能でしたね。

テレビデオ

テレビ+ビデオ=テレビデオ

今では相方の「ビデオ」が無くなったので「テレビデオ」とは呼べなくなりましたが、今もテレビ+レコーダーという製品群はありますよね。
特に三菱が「3つビシッと!」とCMしていますし。

そしてこの頃(1995年頃)も、もちろん各社テレビデオを出していました。
f:id:tokieng:20181103200752j:plain三菱「三菱カラーテレビ総合カタログ 1995年11月作成」より。

三菱のこの製品で特に面白いのが、
リモコン操作でテレビが左右に振り向く機能(オートターン機構)。
隣の部屋や台所からテレビを見たいのに・・・という時に、リモコンを押すだけでテレビが自分に向くように調整できるので、便利ですね。

そして意外にも、23年経った今でもその機能は受け継がれているのです。ビックリ!
最新型の機種(例えばLCD-A40RA1000)にも、その機能は存在しています。

リモコンで画面を見やすい角度にオートターン

LCD-A40RA1000 特長|液晶テレビ|REAL:三菱電機

三菱が受け継いでいるものは他にもあって、ネーミング。
最新型の機種に「らく楽アシスト」「らくらく設定」という機能があります。
そして1995年のこのテレビデオは、その名も「らくちん館ワイド」。

「らく」が三菱のキーワードみたいですね。
今もそのキーワードは三菱の製品群に色濃く息づいているように思います。


また以下の日立のように、「クローズドキャプションデコーダー」機能が付いた機種もあります。
f:id:tokieng:20181103201057j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より

クローズドキャプション」とは、市販のVHSビデオソフトなどに映像と一緒に記録されている字幕情報を、画面に字幕として表示する機能です。今のDVDやBDには、そんな特別な名前はついていないですが、同様に字幕を表示できますよね。


そしてテレビデオといえば、アイワでしょう(個人的感想ですがw)。
f:id:tokieng:20181103202248j:plainアイワ「ビジュアル総合カタログ 1994年12月現在」より。
手元にあるこの「ビジュアル総合1994年12月現在」のカタログには、テレビデオ6機種、ビデオ6機種、LDプレーヤー2機種などが掲載されています。しかも4:3タイプのみ。意外なことに、このカタログにはテレビ単体は載っていませんでした。へー。
あと、当時のアイワはソニーグループなので「スーパートリニトロン管を使っている!」と高画質アピールですね。

ゴーストリダクションチューナー

まずはゴーストの説明が必要でしょう(笑)。

放送をキャッチするのはアンテナの役目ですね。アンテナの位置によって、テレビがきれいに映ったり、映らなかったり、ということが起こります。
デジタル放送の現代では、アンテナの位置によって「きれいに映る」か「途切れ途切れで映る」か「全く映らないか」が変わります。デジタルだから、というだけでなく、様々な工夫も施されているおかげのようですが。

でも、アナログ放送は違います。
「きれいに映る」と「途切れ途切れで(ノイズ交じりで)映る」の間に、たくさんの「きれいに映らない」が存在します。
NECのカタログに、詳しい説明があります。
f:id:tokieng:20181118170941j:plainNEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」より

このような現象を「ゴースト」と呼ぶようです。二重になったり、色がずれたり、とか様々な症状を生みます。
私は電波に疎いのですが、電波塔から発信された電波をアンテナが受信する際に、山やビルに反射した電波までも一緒にアンテナが受け取ってしまうから、ということが原因のようです。
まるで「ヤッホー!」と叫ぶと声が返ってくる、「山びこ」と似ていますね。

ゴーストについては、「日テレ・テクニカル・リソーシズ」さんのブログ記事に、すごく詳しい説明がありました。
www.nitro.co.jp

なにはともあれ、アナログのテレビ放送ではゴーストが悩みの種でした。
それを解消するために、「ゴースト除去チューナー」の出番が出てきます。またそれを内蔵したテレビもありました。
チューナーもテレビも、NECのカタログに掲載されていました。
f:id:tokieng:20181103203159j:plainNEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」より

ゴースト除去チューナー GCT-500、GCT-3000
ゴーストクリア内蔵BSテレビ C-29BS1000

東芝も、ありました。
ゴーストクリーンテレビチューナー TT-GC10
f:id:tokieng:20181103201952j:plain:h300東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

これらのチューナーがゴーストを除去できる原理は、カタログには載っていませんが、NECのカタログには、ヒントがありました。
注意書きの以下の記述です。

次の場合にはゴーストが除去しきれない場合がありますのでご了承ください
(略)
・放送電波にGCR信号の挿入のない場合

テレビ局が、GCR信号(ゴースト除去用基準信号)という信号を出していて、これを使ってごにょごにょ計算するということなのでしょうね。
ゴースト除去用基準信号 - Wikipedia

これも、地上アナログならではの製品ですね。

あと、変わった機種をいくつか…

日立の ゲーム対応 Nextage

まずは、日立の「ゲーム対応 Nextage」をご紹介。
f:id:tokieng:20181103201110j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より

ハイサターンは、日立が発売していたゲーム機です。セガのゲーム機「セガサターン*1」と同じソフトで遊べて、しかもセガサターンよりも多機能、というものでした。
そのハイサターンを簡単に使えるということを売りにした、テレビです。 C-20WM50(モノラル)とC-20WX50(ステレオ)の2機種がカタログに掲載されています。

「話題のゲーム機「ハイサターン」に簡単対応」「本体前面のサターン端子に別売の専用ケーブルで「ハイサターン」をワンタッチ接続」「ハイサターンの電源ONでテレビ電源もONになり、ゲームモードへと自動切換えします」(日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より)
という機能は、結構便利ですね。ゲーム機とテレビの両方を作っている日立ならではの、強みですね。

ゲームポン機能がついた、キララバッソ

ゲーム機と言えば、ソニープレイステーションも。
そのソニーにも、ゲーム機との連携を謳ったテレビがありました。KV-201SW1、KV-16GW1。
f:id:tokieng:20181118175900j:plainソニートリニトロンカラーテレビ/モニター総合カタログ '94.9」より

テレビ前面に、当時では珍しいS端子をつけています。日立のような専用端子ではないので、「ケーブル1本で」というほどまで踏み込んだ機能ではありませんが…。
そして「ゲームボタン」が付いていて、これを押すとテレビの電源が入って、入力が前面入力端子のに切り替わります。

実は日立もソニーも、小型ワイドテレビはこれらのゲーム機能がついた機種だけなので、
ゲーム対応テレビを作ったというよりも、小型ワイドテレビにゲーム対応というプラスアルファの機能を付けたという戦略かな、という気がします。

LD内蔵テレビ

LDとは、レーザーディスクの略です。今で言えば、DVDやBDですね。光ディスクに映像信号を記録します。アナログ信号でしたっけ?

そんなLDプレーヤー内蔵テレビがありました。東芝 24WL20。
f:id:tokieng:20181103201914j:plain東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」より

LDのソフトにはもちろん映画もありましたが、このテレビのターゲットは「カラオケ」でしょう。
カタログに掲載しているテレビの画像が、どう見てもカラオケです。
スナックや居酒屋、旅館の宴会場などでは「レーザーカラオケ」が主流でした(今は知らない)。
おそらく、そういうニーズに応えるテレビかな、という気がします。

ビデオCDプレイヤー内蔵テレビ

ビデオCDとは、音楽CDと同じディスクに、映像データをデジタルで記録したものです。レーザーディスクは大きくて、プレイヤーもソフトも高価でしたが、ビデオCDはそれよりも安価でした。
長時間の記録ができないので、カラオケだったり語学教材だったり、アイドルやアニメなどの映像ソフトが市販されていたように思います。
映像メディアの本流には、なれなかった規格です。

三菱、日立から、そんなビデオCDが再生できるテレビが発売されていました。ノリはテレビデオですかね。

f:id:tokieng:20181103200811j:plain三菱「三菱カラーテレビ総合カタログ 1995年11月作成」より

f:id:tokieng:20181103201058j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より

ビデオCDだけでなく、もちろん音楽CDも再生できます。CD-GとかフォトCDとか、今となっては説明が必要なメディアも再生できますが、今回は省略…。

冷蔵庫内蔵テレビ!?

f:id:tokieng:20181103201159j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」より

日立の CRK-2150。冷蔵庫と一体化した21型テレビ!
意外な組み合わせですね。
でも考えてみたら、旅館やビジネスホテル、公民館や集会所などに、コンパクトでピッタリな気がします。

厚みのあるブラウン管テレビならではの組み合わせですね(笑)。

CDラジカセ内蔵テレビ

パナソニック TH-14AV1。テレビデオに、CDラジカセが付いたという、オールインワン(古っ)なテレビです。

「これ一台で、テレビ、ビデオ、CD、カセット、FMが楽しめる」(パナソニック「カラーテレビ '95/冬」より)とあります。
テレビ上面に、CDラジカセをそのまま付けたような感じの外観です。

すごいなぁ(笑)

さて次回は

前回ちょっと気になった、BSデコーダーについてまとめてみます。
誰も興味ないでしょうけど…(笑)。

本シリーズの記事一覧は、こちらから。
tokieng.hatenablog.com

*1:1994年発売の32ビットゲーム機ですね。ソニープレイステーションと激しい競争をしていました

テレビ24年間の進化①

2018年12月1日。ついに新4K8K衛星放送が始まる。
世界初の8K放送が始まる!何かのイベントで見たけど、8Kの映像はすごい!
そうそう、シャープが先日、8Kチューナー内蔵のテレビを発表したっけ。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1146983.html

80型が200万円、70型が100万円、60型が75万円前後。
100万円を大きく切った!思ってたよりも安い!という印象。私には買えないけどw

そういえば…と、本棚に手を伸ばす。

1995年2月のシャープのテレビ製品のカタログ。
このころは、アナログハイビジョンが「実用化試験放送」として放送されていた頃だ。

36型が100万円。

おぉ!
今の8Kテレビのほうが、大型で、しかも安い!
なんだか、8Kテレビは個人でも買えるものかもしれない、と思うようになってきた(でも買えない)。

そして、さらに別のカタログに手を伸ばす。

1994年9月のソニーのテレビ製品のカタログ。

…私の「なかなか他人に理解してもらえない趣味」の一つに、家電のカタログ集めというのがあって、手元にある最も古いテレビのカタログが、ソニーのだった。

古いカタログをパラパラめくると、すごい。すごく古い(笑)
24年間でテレビはこんなに変わったのか!と。

新4K8K衛星放送開始を記念して、膨れ上がった古いカタログを見直して、そろそろテレビの変化をまとめたくなった!

・・・
ということで、これから何回かにわたって、私の手元にあるカタログの情報をベースに、24年間のテレビの進化についてまとめる予定です。
私の手元に当時の全てのカタログが揃っているわけではないので、特に物事の順番や時期は完璧ではないかもしれませんし、漏れもあるかもしれません。ご了承くださいませ。

目指せ「8K本放送前の完結」!

第1回・1994年~1995年前半のテレビ事情~ワイドテレビ普及期のはじまり~

このころは、ワイドテレビ(16:9)と、ワイドじゃないテレビ(4:3)の両方が販売されてて、いよいよワイドテレビが本格的に普及するかな?といった時期だった気がします。

で、1994年~1995年前半いくつかのメーカーのテレビカタログを並べてみました。
手元にあるカタログは、以下のメーカー。(基本的に発行日順。ほかは順不同)

  • ソニー (1994/09)
  • パナソニック (1995/01)
  • ビクター (1995/01)
  • サンヨー (1995/01)
  • シャープ (1995/02)
  • 東芝 (1995/04)
  • 日立 (1995/04)
  • NEC (1995/06)
  • アイワ (1994/12)
  • カシオ (1995/08)
  • 三菱 (1995/11) ※1995年後半のだけど、手元にそれしかなかったので…

発行時期がバラバラなのは、ご愛敬ということで。

f:id:tokieng:20181020153938j:plain

なお本記事には、引用を目的として、カタログを撮影した画像を掲載しております。事前に各社に画像の使用の可否を問い合わせた上で、引用しております。各社の著作権などを侵害しないために一部モザイク加工しております。
メーカー様へ
当方からの不躾なお願いにもかかわらず、お忙しい中ご返答いただきましてありがとうございました。大変感謝しております。

小さくて見えずらいですが、表紙にテレビが掲載されています。今のテレビとは全く形が異なりますよね。

当時のテレビ放送まとめ

まずはテレビ放送の当時の状況から振り返りましょう。
1994~1995年を簡単にまとめると、以下の4種類の放送がありました。

  • 地上波放送(アナログ)
    ごく普通の地上波アナログ。みんな見ていました。NTSC方式。
  • BS放送(アナログ)
    1995年は本放送開始から7年経ったころで、この時放送していたのは、NHK BS1NHK BS2、それと有料のWOWOWのみでした。つまりチャンネルは3つで、地上波の民放系列局はまだ無かったということです(St.GIGAという衛星ラジオ放送局もありました)。
    BSチューナー非搭載のテレビ向けに、単体のBSチューナーがありましたね。
  • CS放送(アナログ)
    1992年に始まったばかりの新しい放送。
    CS放送サービスとして、「SkyPortTV」と「CS BAAN(バーン)」がありました。チャンネル数は、SkyPortTVは6つ、CS BAANは5つ。いまのデジタルCSとははるかに少ないですね。
    これを受信するには、各サービスに対応したチューナーとCSアンテナが必要で、さらに受信契約が必要でした。一般家庭で見ていたお金持ち人は、どれくらい居ただろう…?
  • ハイビジョン実用化試験放送(アナログ)
    当時はMUSEという方式で、アナログハイビジョンの放送を行っていました。
    1991年~1994年はNHKのみで「試験放送」でしたが、1994年11月からは1つのチャンネルで時間を区切って、NHKと民放各局による「実用化試験放送」がスタートしました。
    これを見るには、ハイビジョン対応(MUSEデコーダ内蔵)のテレビか、MUSE-NTSCコンバータが必要でした。

ハイビジョンも含めて、全部アナログで、そして映像のアスペクト比(縦横比)は、ほとんどが4:3でした。ハイビジョン放送は例外で、16:9でした。
4:3である地上波放送で16:9のコンテンツ(映画)を放送する場合は、(大昔は横方向を無理やり押し潰して何もかもが細長くなるような映像だったこともありましたが)この頃は、映像の左右をカットして4:3にすることが多く、たまに映像の上下に黒帯をつけて4:3にすることも行われていました。

この時代のテレビの特徴

そしてテレビ本体。
まずは、テレビの映像表示部分(以下、表示デバイス)が、今(2018年)とは大きく違います。
今は液晶テレビとか有機ELテレビですが、このときの主流は「ブラウン管」!
ブラウン管だけでなく、「プロジェクション」「液晶」もあって、3種類。
それぞれの特徴を主観的に(笑)まとめてみました。

ブラウン管

当時の各メーカーの主力がブラウン管。もちろん、いろんな家庭の中を見てもブラウン管だけでした。
他の表示デバイスと比べた特徴は、「そこそこ大きい」「重い」「厚い」。

そこそこ大きい画面サイズ

まず16:9のテレビだと、16~36型。メインは28型か32型くらいかな?
もう少し時代が進むと、36型が増えていきます。
16:9のテレビを「ワイドテレビ」と各社呼んでいました。
f:id:tokieng:20181103201902j:plain東芝カラーテレビ総合カタログ'95-4(P9-10)より

f:id:tokieng:20181103201007j:plain日立カラーテレビ総合カタログ'95-4(P3-4)より

そして4:3のテレビは、
6型~大きくても37型くらいでした。個人的には、29型が手頃な大画面かなという印象です。
「リビングには大画面の29型」「寝室や子供部屋には14型」「車には6型」という感じでした。
住宅環境の変化もあって、現在では29型は、「大画面」とは呼べないサイズになっていますね。
いくつか例を挙げると、

37型:f:id:tokieng:20181104121711j:plain三菱「三菱カラーテレビ総合カタログ 1995年11月作成」(P17-18)より
29型など:f:id:tokieng:20181103201945j:plain東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」(P15-16)より
21~14型:f:id:tokieng:20181103201139j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」(P14-15)より

重い

なぜ重いかというと、やはりブラウン管がガラスでできているからでしょう。ガラスの重さです。
どのくらい重いかというと、
4:3テレビは、

  • 37型 81.5kg 三菱 37C-DX2
  • 34型 81.3kg ソニー KV-34ST90S
  • 29型 41.3kg 東芝 29S17
  • 21型 21.2kg パナソニック TH-21Z1
  • 14型  9.2kg 三洋 C-14D6
  • 10型 5.9kg ソニー KV-10DS1

21型テレビでも、一人では持ち歩きづらい重さ。34型とか37型となると、もはやどうやって運ぶの?というレベル。

16:9テレビは

  • 36型 78.3kg 東芝 36W10
  • 32型 51.0kg 三菱 32W-JF1
  • 28型 36.5kg NEC C-28Z3
  • 24型 26.8kg ビクター AV-24V4
  • 20型 20.0kg シャープ 20C-WA5

回路も重量がそこそこあるはずですが、サイズが大きいほどすごく重くなるので、ブラウン管の割合が大きいのでしょう。
2018年の液晶32型テレビが6kgとか7kgとかの重量なので、技術の進歩は凄まじい・・・。

厚い

奥行きがあります。すごく。
例えば、
日立の32型(C32-WE50)で、56cm。
パナソニックの29型(TH-29GF20)で、45cm。
他も似たり寄ったりなので、ばっさり省きますが、だいたい35~60cmはありました。
ブラウン管サイズが大きくなるほど厚くなりますが、小型の14型でも 37.0cm(東芝 14R8)でした。
奥行きがあるため、よほど空間に余裕がなければ、ブラウン管テレビは部屋の角に置くのが一般的でした。

f:id:tokieng:20181103200607j:plain三菱「三菱カラーテレビ総合カタログ 1995年11月作成」(P7)より

そういえば、当時のカラオケボックスでは、テレビはたいてい部屋の隅だった気がします。

プロジェクション

ブラウン管だと大きくても37型とか36型なので、それ以上の大画面をどうするか?という当時の解法が「プロジェクションテレビ」でした。「リアプロジェクションテレビ」とも言いました。
これは構造が変わっていて、プロジェクターとスクリーンが一つの箱に入っているようなものでした。テレビの下部にあるプロジェクターからの光を正面のスクリーンに投影する、という仕組みです。
この当時も家庭用プロジェクターはありましたが、明るい映像を出せないので、部屋を暗くする必要がありました。しかも取付も大変。
なのでプロジェクションテレビは、プロジェクターとスクリーンを一つの箱に入れることで、普通の(ブラウン管)テレビと同じように気軽に扱えるようにした、というイメージです。
役所とかの公共施設や、研修施設とかで見たことあるという人もいるかも。

f:id:tokieng:20181104121726j:plain三菱「三菱カラーテレビ総合カタログ 1995年11月作成」(P19)より

f:id:tokieng:20181103201043j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」(P9)より

液晶

2018年では主流の液晶も、当時はまだ出始めのころでした。

現在の液晶と比べると「小さい!」の一言。3型か4型がほとんどでした。
なので部屋に置くというよりも、「車載用にいかが?」「持ち歩きできますよ!」とカタログでアピールしていました。
f:id:tokieng:20181103175540j:plainソニートリニトロンカラーテレビ/モニター総合カタログ '94.9」(P18)より

この当時カシオも液晶テレビを作っていました。というより、小型液晶テレビといえばカシオ、という印象でした(個人的印象)。車載用の3~4型だけでなく、持ち歩き用に1.6~4型など、多くの個性的な機種を展開していました。

f:id:tokieng:20181103202104j:plain
f:id:tokieng:20181103202138j:plain
カシオ「液晶カラーテレビ総合カタログ 95/8」より

3型というと、今のスマホよりもはるかに小さいのですが、テレビを持ち歩ける・いつでもテレビが見れるというのは、当時としては画期的でした。
カシオ+液晶で、思い出すものありませんか?そう、世界初の液晶付きデジカメ QV-10です(「液晶表示部が無いけどデジタル記録するカメラ」はその前からありましたけどね)。小型液晶テレビ+レンズーTVチューナ=QV-10。今振り返ってみると、カシオが世界初のデジカメを作ったというのはすごく自然な流れに感じます。

で、一つだけ、9.5型という当時としては大画面の液晶テレビを出していたメーカーがあります。それは意外にも、NEC
NEC LC-10W1。

f:id:tokieng:20181103203158j:plainNEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」(P7)より

価格は29万8千円!ひえー!
この機種は1994年秋頃に発売されているので、この時点ではもう少し値下がりしているかもしれませんが。でもそういう値段だったのですね。
9.5型というサイズなので、「壁に掛ける」「机に置く」など、これまで不可能だった場所にテレビが設置できるようになりました。
NECは今では企業向けというイメージが強くて、家庭向けにはパソコンかWiFiルータか蛍光灯くらいしかありませんが、当時は「日本電気ホームエレクトロニクス」という会社が家庭用向け電気製品を各種販売していました。
NECの液晶製品は、今でもパソコン用や各種用途に特化した液晶ディスプレイ「MultiSync」がありますね。

入力端子

アンテナ端子を除くと、以下の端子がありました。

  • ビデオ端子(黄)
  • 音声端子(白、赤)
  • S端子
  • 一部機種には、RGB端子も。

ビデオの黄色と、音声の白と赤の3色は、今でもよく見かけます。別名RCA端子とか。
RGB端子は、当時は「マルチメディア」という言葉が流行っていたころで、パソコンやいろんな機器が接続できる、と謳っていた機種も、若干ありました。
現在は、入力端子といえばHDMI全盛期で、S端子も無くなって、ビデオ入力すらないテレビもありますね…。

NECのカタログにはテレビ背面の入出力端子の写真も掲載されていましたので、それを見てみましょう。
BSチューナー非搭載でステレオでもないモノラルテレビ C-14R39 は、
f:id:tokieng:20181103203314j:plainNEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」(P11)より

これだけ。ザ・シンプル!
モノラルテレビなので、音声信号は1本のみでよいことから、黄+白のみになっています。

そしてBSチューナー非搭載なステレオテレビ NEC C-28S3は、
f:id:tokieng:20181103203109j:plainNEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」(P5)より

S端子もあるし、入力も2系統ありますね。

BSチューナーが搭載されると、途端に複雑になります。例えば NEC C-24VW3 は、
f:id:tokieng:20181103203110j:plainNEC「VA総合カタログ 1995 SUMMER」(P5)より

うん、端子がいっぱいですね。
ちなみに、右上の「BS出力」は、BSチューナー非搭載のビデオデッキでBS番組を録画するためのものです。今でこそBSチューナー内蔵レコーダーなんて「当たり前」ですが、当時はチューナーが高かったのです。テレビに内蔵しているチューナーを、ビデオでも使いまわしていたのです。
そして右下の「BSデコーダー」にある「ビットストリーム出力」「検波出力」は、WOWOWデコーダーに接続するための端子です。WOWOWは有料放送なので、契約している人だけが視聴できるようにスクランブル(暗号)をかけているので、スクランブルを解除する(暗号を解く)ためにデコーダーという機器が必要でした。そのデコーダーが復元した元の映像をテレビが受け取るために、「BSデコーダー入力」という枠の中に黄・白・赤のビデオ入力端子が存在します。分かりにくいですよねー。
ちょっと興味沸いたので、次の次の回あたりで「BSデコーダー」についてまとめることにしましょう。

当時の特色

各メーカーの訴求点としては、「高機能」「高画質」「高音質」。それは今も昔も変わらず、ですね。
地上アナログ放送は、現在のデジタルハイビジョンと比べると高画質ではないのですが、アナログだからこそ、ブラウン管だからこその方法で、各社は様々な方法で改良を行っていました。

各社のブランド名

まずは、テレビに付けられたブランドを振り返ってみましょう。カタログからいくつか抜粋すると、以下が挙げられます。

東芝BAZOOKA、WIDE BAZOOKA。「バズーカ」と読みます。
日立Nextage。「ネクステージ」と読みます。
ソニーKIRARA BASSOキララバッソ
パナソニックヨコヅナ、画王
4:3テレビには「画王」。
16:9テレビは、一時期「ワイド画王」と称していましたが、ヨコヅナに。1995年1月のカタログには、両方載っています。
三洋帝王、WIDE帝王
ビクターPANORAMA、マガジン
NECParabola
BSチューナ内蔵ビデオや単体BSチューナーも「Parabola」と名乗っていましたので、BS機器全般のブランド名のようですね。パラボラアンテナを連想させる名前に。
シャープニュースビジョン

並べてみると、
 高画質、高音質を印象付ける名称、
 ワイド画面であることを強調する名称、
 特長的な機能をアピールする名称、
とに分かれるような感じがしてきますね。

ブラウン管のアピール

いくつかのメーカーは、ブラウン管にも名前を付けて、独自性をアピールしていました。デバイスの特徴が製品の特徴になる、というアピールですね。
特に有名なのが、ソニーの「トリニトロン」でした。

  • ソニー
    「HDトリニトロン」「スーパートリニトロン管」
    カタログの表紙から、「Trinitron」を強調しています。
    f:id:tokieng:20181104150021j:plain:h500ソニートリニトロンカラーテレビ/モニター総合カタログ '94.9」(表紙)より。
    f:id:tokieng:20181104150750j:plain:w500ソニートリニトロンカラーテレビ/モニター総合カタログ '94.9」(P2~3)より。

    「画質で選ぶなら、テレビは”トリニトロン”」(ソニートリニトロンカラーテレビ/モニター総合カタログ '94.9」(P2~3)より)

    絶対的な自信、誇り、信頼、というのを感じます。

  • 東芝
    「スーパーブライトロン管」
    見開き2ページで、「色も歴史も塗り替える。23年ぶりに、次世代ブラウン管誕生。あざやかな輝き、世界初、『スーパーブライトロン管』。」(東芝「カラーテレビ総合カタログ'95-4」(P3-4)より)
    f:id:tokieng:20181103201728j:plain:w1000

    細かな技術的アピールが、しっかりと記載されています。意気込み、熱意、自信作!という感じが伝わってくるようです。

  • 日立
    「ワイドキドマトロンブラウン管」
    f:id:tokieng:20181104122618j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-11」(P3-4)より
    f:id:tokieng:20181104122643j:plain日立「カラーテレビ総合カタログ '95-11」(P5-6)より

    電子銃を写真付きでアピールしているのは、面白いですね。ブラウン管ならではです。
    「日立ブラウン管伝統のハイコントラスト&ハイフォーカス性能に加え、さらに明るさをアップ」(日立「カラーテレビ総合カタログ '95-11」(P5-6)より)
    説明はスペースも小さくて地味ですが、伝統をアピールしているところに、安心感が伝わってきます。

    「スーパーネオブラックワイドブラウン管」という名称もありました。時期的に、一つ前の世代かも?(日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」(P5-6)より)
    f:id:tokieng:20181103201019j:plain
    「ダークティントガラスで黒をくっきり再現。」(日立「カラーテレビ総合カタログ '95-04」(P5-6)より)とあり、黒が特長のようですね。

  • 三菱
    「純ブラックブラウン管」「リアルブラックブラウン管」
    名称くらいしか記載がなく、詳細なアピールは無いですね。
    ですが「黒」がクッキリと表現できそうだな、というイメージがストレートに伝わってきます。
    「純」と「リアル」の違いがよく分からないですけどね。

  • ビクター
    「ハイビジョン・フラットブラウン管」「スーパーフラットフェイスブラウン管」
    f:id:tokieng:20181103201535j:plainビクター「カラーテレビ総合カタログ '95-1」(P14)より
    f:id:tokieng:20181103201617j:plainビクター「カラーテレビ総合カタログ '95-1」(P16)より

    こちらも説明スペースが小さいですが、特徴がまとまっています。
    ハイビジョンブラウン管の「コーティング材料の帯電防止効果により、ブラウン管表面へのホコリの付着も防止します」(ビクター「カラーテレビ総合カタログ '95-1」(P14)より)という説明が、なんだか懐かしいですね。ブラウン管の表面には静電気がよく溜まっていたなぁ、と思い出します。
    ブラウン管のコーティングを強調している印象です。

  • パナソニック
    この時期はブラウン管の特徴をストレートに表現した名前でした。
    「NEWスーパーフラットハイビジョンブラウン管」「NEWスーパーフラットワイドブラウン管」「スーパースリムブラウン管」

  • 三洋
    「NEWダークティントワイドブラウン管」(三洋「カラーテレビ総合カタログ '95-冬」P3-4より)。

  • シャープ
    スーパーフラット4原色ブラウン管」(シャープ「カラーテレビ総合カタログ1995年2月現在」P14より)
    4原色!?
    「赤、緑、青+黒を忠実に再現」(シャープ「カラーテレビ総合カタログ1995年2月現在」裏表紙より)とあります。詳細な説明がないので推測ですが、黒をより再現できるということを表現しているような印象です。

    「シャープ」「4原色」といえば、2010年の液晶テレビAQUOSクアトロン」が思い出されます。クアトロンは、赤、緑、青、黄の4色ですね。
    シャープの「4原色」の歴史は、意外と長い!

「ブラック」を強調しているブラウン管が多いですね。液晶テレビも、有機ELテレビも、黒をどうやって表現するかをアピールしていますが、ブラウン管のころからなのですね。

あと、いくつかのブラウン管で「フラット」と謳っているものがありますが、このころの「フラット」は「依然と比べたらフラットになった」ということで、今の液晶テレビのようなフラットさではありませんでした。フラットブラウン管は、1997年まで待つことになります。

さて

そろそろ、だいぶ長くなってきました。今回はこの辺で。

次回は、その当時の「機能」や、変わった機種を、振り返りたいなと思います。



ちなみに

家電のカタログは、「製品の売り」「今」「これから」が端的にわかる、素晴らしい読み物です。
話題の製品をよく知るために。家電製品を買う時の比較検討材に。今の家電製品にはどのような魅力があるのかを知るために。漠然と「古くなってきたな」と思っているけど今買い替えるべきなのか、を判断するために。など、いろんな思いで読んでいます。
カタログを見て、思いつきもしなかった、かゆいところに手の届く製品に気づくこともあります。そのメーカーのファンになることもあります。そして、他人におススメを相談された時の、調べものにも使います。

製品情報は、各社Webサイトでも簡単に入手できますし、もちろん私もWebも使います。
しかし「比較する」「俯瞰する」となるとやはり、紙媒体であるカタログに勝るものはないと思っています。製品の数だけディスプレイを用意するわけにもいきませんが、カタログなら、並べるだけで比較できます。最近のWebは「レスポンシブデザイン」の影響か、パソコンやタブレットであっても「俯瞰」という点では不便さを感じます(スマホだとちょうど良いんですけどね)。
そして、最新式の製品を買うこともあれば、型落ちの製品を買うこともあるわけでして。型落ち製品の購入を検討するときにその製品の情報を得たいので、型落ちのカタログをあらかじめ持っておきたい、というのが「カタログを集める」という動機だったりします。

そうこうして24年も情報収集してきました。そして気づいたことがあります。
最新のカタログを見ると「最近の進化」は分かります。でも特にテレビは、そう簡単には買い替えないものです。今のテレビを買ってからの10年、15年分の進化は、10年、15年分のカタログを見ないと分からないな、と。
24年分の進化をそろそろ俯瞰して見てみたいな、と思い、記事を書き始めました。
現代のテレビまで書き続けられるかどうか、うまく伝えられる文章が書けるのかかなり不安ですが(笑)、お付き合いいただけますと幸いです。

新4K8K衛星放送、新4K8K放送、4K放送とかいろいろ呼ばれていますが、いずれにせよ、もう間もなく開始ですね。

Raspberry Pi を学習リモコンに変身させるパーツ(ADRSIR)の、ライブラリを作ってみた

品薄でなかなか買えなかった、ADRSIRが、ようやく手に入った。

ADRSIRのメーカーによる紹介記事は、こちら。
bit-trade-one.co.jp

Amazonとかヨドバシカメラとかで、売ってます。

で、ようやく手に入ったものの・・・
Raspberry Piからどうやって操作したらいいかの情報が、パッケージにはほとんど皆無 (´;ω;`)

ビットトレードワンがサンプルコードを提供していることに気づくまでに、かなり探した・・・。
そのサンプルコードは、
ビットトレードワンのサイトの、
 「サポート」→「ダウンロード」→「USB接続 ラズベリー・パイ専用学習リモコン基板」
でたどり着けます。

サンプルコードが、ちょっと私の用途には使いづらかったので、コードからエッセンスだけを読み解いて、一から私好みのライブラリを作ってみました。adrsirlib。
github.com
https://github.com/tokieng/adrsirlib

えぇ、勢いで公開するものですけど。
もしよかったら、どうぞ。

黒電話をスマホの子機(Bluetoothヘッドセット)に!⑩

ラズパイ(Raspberry Pi)を使って、黒電話をスマホの子機にしようという、工作をしています。

過去記事は、こちらから。
tokieng.hatenablog.com

前回までで、回路に若干の改良の余地を残しながらも、ハードとソフト(KurodenwaPi)が出来上がった!

ということで、今回の作品の紹介だ!

屋外でも発信できます

ラズパイは、スマホ用のモバイルバッテリーを電源として使えるので、外に持ち出してみたよ。

黒電話(600-A2型)を持って散歩してみた①

もちろん、屋外でも着信できます


黒電話(600-A2型)を持って散歩してみた②

トーン信号も送れます

今どきの普通の電話機は、「1」~「9」と「0」「#」「*」のボタンがあって、話しているときにそのボタンを押すと、「プー」とか「ポー」とか音が出せるよね。あの音がトーン信号。
クロネコヤマトとか日本郵便の再配達依頼を、電話で申し込んだことがある人は分かると思うけど。

で、あの再配達依頼は、トーン信号が出せる電話機じゃないと手続きができないから、黒電話からは無理。
だって黒電話だとトーン信号が出せないんだもん(黒電話は、トーン信号が発明される前の電話機だからね)。

だからせっかくなので、トーン信号を出せるようにアプリ作ってみたよ。

その動画がこちら。

Raspberry Pi内蔵の黒電話で、トーン信号を送信

フックを短く押すと、「*」の音が出るの。
(だって、日本郵便の再配達依頼の電話サービスは、最初に「*」を押せって言われるからねー)


黒電話なのになぜそんな音が出せるのかというと、実はトーン信号を作っているのは、黒電話でも、ラズパイでもなくて、Bluetoothで接続したスマホだからなのだ。

この記事の2回目で紹介したように、ラズパイ↔スマホ間は、BluetoothHFPというプロファイルで通信しているんだよね。
tokieng.hatenablog.com

で、HFPには「1のトーン信号を相手に伝えよ」とかのコマンドがあるんだ。
なので、

黒電話で1をダイヤルする
→ ラズパイがそれを検知する
→ ラズパイがスマホに「1のトーン信号を相手に伝えてね」と指令を出す
→ スマホが、電話で話している相手に「プー」という音を鳴らす

という仕組みで、トーン信号を出せるのだ。


よし、日本郵便の再配達を、黒電話から依頼するぞ!
・・・と思ったけど、僕宛の贈り物ってないからなぁ。再配達の依頼もできないやw

ほかにも!

せっかくなので、ラズパイを生かした機能欲しいよねー。
でも電話機でできる機能って・・・。

あ、旅館やホテルの客室にある電話で出来る、あれだ!

モーニングコール!

というわけで、その機能もKurodenwaPiに入ってるよ!
黒電話から 7番 に電話してみてくださいな o(^-^)o


Raspberry Pi内蔵の黒電話で、モーニングコール

0700とダイヤルしたらちゃんと「7時ちょうど」と言うし、0815とダイヤルすると「8時15分」と言ってくれる。
これは、ダイヤルされた数字をもとに、音声合成しているから出来る技なのだ。
ラズパイならではだね!

この音声合成は、以前紹介した AquesTalkPi によるもの。
ラズパイは、いろんな人が作ったいろんなソフトを使うことができるから、いろんなことができるんだねー。ありがたいよね。


旅館っぽさを醸し出すために、番号案内のプレート作って置いてるよ。
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え?2番?w



本シリーズの全記事は、こちらから。
tokieng.hatenablog.com

次回予告

さて、回路の改良かなー。
またトランジスタの勉強だー。